- 分籍したことが毒親にバレるのが不安
- 自分の住んでいる家の場所を毒親に知られたくない
- 毒親から危害を加えられそうで怖い
「毒親から報復を受けそうで怖い」「毒親から逃げたいけど法的手続きは取りづらい」と感じる方が増えています。毒親の悪行を公にさらすことはできても、世間体や身の危険を考えると、そこまですることなのかと悩むケースは非常に多いです。
私は、毒親の件で閲覧制限をかけませんでしたが、モラハラ夫との離婚に際して住民票の閲覧制限をかけました。毒親に限らず、攻撃をしてくる人から身を守るための手段として有効です。
そこでこの記事では、戸籍謄本・住民票の閲覧制限の手続きについて、必要書類や注意点とあわせて解説します。
この記事を読むと、分籍をはじめ法的な手続きを取ることのハードルが下がり、毒親から距離を置きやすくなります。
閲覧制限は特定の人に自分の情報を見られないようにすること
閲覧制限は、婚姻関係や親子関係にある人などによる戸籍謄本や住民票の閲覧を制限する手続きのことです。今は、閲覧制限ではなく、「支援措置」と呼ばれることもあります。
現状、婚姻関係や親子関係のある人は、住民票や戸籍の住所を無条件で見ることができます。被害者がDVや虐待から逃げるために、即バレするのを予防します。
閲覧制限の手続きの必要書類
閲覧制限の手続きの必要書類は下記のとおりです。
- 本人確認書類(顔写真付きの身分証明書)
- 印鑑(朱肉で押すもの)
- 事情を説明するための資料(音声、写真、診断書など)
閲覧制限の申請ができる人
戸籍謄本・住民票の閲覧制限を申請できる人は、住民基本台帳に記録されている人で、下記のいずれかの状態に該当すると相談機関が認める人です。
- DV(家庭内暴力)の被害者で、暴力により生命および身体に危害を受けるおそれがある
- ストーカー行為等の被害者であり、さらに反復してつきまとい等をされるおそれがある
- 児童虐待を受けた児童であり、再び児童虐待を受ける支障が生じるおそれがある
- その他、上記に準ずる行為を受けるおそれがある
アフターケア事務所「ゆずりは」の所長をつとめる高橋亜美さんによると、
ある大学生は、コロナ禍でアルバイトなど一時的に親と離れられる場所がなくなり、支配的な親や暴力的な親と一緒にいる時間が長くなった。学校は休学しても辞めてもいいから逃げたいです、と相談しに来ました。
NHK福祉情報サイト ハートネット(2021年8月17日)
とのことです。毒親の言動が目にあまるなら、ダメ元でも申請を検討する価値はありそうですね。
閲覧制限で制限できるもの
閲覧制限で制限されるものは、DV、ストーカー、児童虐待の加害者から請求された
- 住民票の写し(現住所)
- 住民票の除票の写し(前住所)
- 戸籍の附票の写し(現本籍)
- 戸籍の附票の除票の写し(前本籍)
- 住民票記載事項証明書(現住所)
- 印鑑登録証明書(現住所)
- 各種税証明書(現住所)
- 住民基本台帳の一部の写しの一覧(支援対象者の記載削除)
です。これらは「住民基本台帳法」で定められています。
弁護士、法人、債権者など第三者からの請求は、本人確認および請求事由により厳格に審査されます。
閲覧制限の適用期間
閲覧制限の適用期間は1年間です。
期限前に閲覧制限を継続するかどうか、役所から通知が届きます。閲覧制限を継続する場合、期限内にあらためて申請手続きが必要となります。
閲覧制限の注意点
閲覧制限の注意点は下記のとおりです。
- 戸籍謄本・抄本には住所が記載されていないため、閲覧制限の対象外です。
- 戸籍謄抄本に本籍は記載されますが、現住所は記載されません。
- 閲覧制限は、申出者以外からの請求をすべて拒否する制度ではありません。公的機関、裁判など利害関係者からの第三者請求、弁護士による職権請求など、正当な理由による請求は制限の対象外となります。
閲覧制限の手続き手順は3ステップ
閲覧制限の手続き手順は下記のとおりです。
- STEP1:閲覧制限を申請する
- STEP2:役所で申出書の内容を確認する
- STEP3:閲覧制限が適用される
ただし、手続き方法は都道府県、市区町村によって違います。詳しくは、市区町村の役所や警察の生活安全課に確認してください。
STEP1:閲覧制限を申請する
被害者が住民票と本籍のある役所に、「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出します。
STEP2:役所で申出書の内容を確認する
提出された申出書をもとに、役所は証拠書面の提出を求めます。証拠書面がない場合は、支援の必要があるかどうか、下記の機関に意見を求めて最終的な判断をします。
- 裁判所の発行する保護命令決定書の写し
- ストーカー規制法に基づく警告等実施書面
- 警察・配偶者暴力相談支援センター(女性相談所)
- 福祉総合センター
- 児童相談所などの相談機関
- 民間の被害者支援団体
- シェルターを設置運営する法人
被害の実態を確認し、その結果を依頼者に連絡します。このときに、関係市区町村へ申出書が転送されます。
STEP3:閲覧制限が適用される
役所にて閲覧制限が必要と判断された場合、閲覧制限が適用されます。加害者である婚姻相手や家族・親族に、あなたの所在地が開示されることはありません。
閲覧制限の手続きとは別に対応しておくこともある
閲覧制限の手続きであらかじめ対応すべきことは下記のとおりです。
警察へ相談する
警察への相談はしておいた方が安心材料になるだけで、必ずしなければいけないことではありません。
引っ越しした後に警察へ相談している間に、加害者が引っ越し先の住所を調べる可能性があります。
閲覧制限をすると決めたら、すぐに警察へ相談する、必要に応じて早めに閲覧制限の申請をするくらいがちょうどいいかもしれませんね。
本人通知制度を利用する
本人通知制度は、住民表の写しや戸籍謄本などの証明書を第三者に交付した場合に、事前に登録されている方に交付されたことを郵便でお知らせする制度です。
通知の対象となる証明書は、
- 住民票の写し
- 戸籍の附票の写し
- 戸籍全部(個人・一部)事項証明書
- 戸籍謄抄本
- 戸籍届出記載事項証明書
- 住民票記載事項証明書
です。閲覧制限をかけられる証明書とだいたい同じです。
閲覧制限ができなかったとしても、加害者やその関係者に交付されていないか確認するには有効な方法です。
引っ越し後に住民票を移す
加害者に引っ越し先を特定されてしまっては、元も子もありません。閲覧制限が適用されてから、引っ越し先に住民票を移すのが無難です。
ひとり暮らし・引っ越しについて、詳しくは下記の記事で紹介しています。これから引っ越す方は参考にしてみてくださいね。
閲覧制限の手続きQ&A
最後に、閲覧制限の手続きにまつわる疑問をQ&A形式でまとめたので、参考にしてみてください。
- 本人確認書類にはどんなものがあるの?
-
本人確認書類は、下記のようなものが挙げられます。
- 自動車運転免許証
- パスポート(旅券)
- マイナンバーカード
- 写真付き住民基本台帳カード(住基カード)
- 在留カードまたは特別永住者証明書
- 療育手帳
- 身体障害者手帳
- 本人の写真付きで公官庁が発行した免許証、許可証、資格証明書
- 閲覧制限の手続き期間はどのくらい?
-
閲覧制限の手続き期間は約2週間。閲覧制限がかけられた場合のみ、「支援措置申出書」が届きます。
被害の事実確認が必要になるので、期間は状況により変わることがあります。かならず2週間ということはありませんので、ご注意ください。
- 閲覧制限の申請はスムーズに進むの?
-
どちらかというと、思うように進まないと思って対応を進めておく方が無難です。
被害の実態を確認する役所の相談員などが、あなたの置かれている状況を理解するとは限りません。
その相談員の価値観というフィルター越しに判断するので、あなたにとって心ない言葉をあびせることもあるかもしれません。心が折れて、閲覧制限の手続きをあきらめたくもなりますが、自分のために辛抱強く対応しなければならない場面もあるかもしれません。
まとめ:必要なものをそろえて閲覧制限の手続きをしよう!
上記で紹介した「閲覧制限の手続き手順」を実践すると、誰でも簡単に閲覧制限の手続きができます。
最後にもう一度内容を確認しましょう。閲覧制限の手続きで必要なものは下記のとおりです。
- 本人確認書類(顔写真付きの身分証明書)
- 印鑑(朱肉で押すもの)
- 事情を説明するための資料(音声、写真、診断書など)
閲覧制限は、毒親から逃れて穏やかな生活を送るための手段のひとつです。閲覧制限が適用されるかは別にしても、「これ以上毒親と関わりたくない」と決断できたら、手続きしてみてください。
閲覧制限が適用されれば、分籍の手続きをするハードルも低くなります。先々を考えると、あなたの人生を変える転機となりうる手続きなので、今できることを実行してみましょう!
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