・分籍という制度を知りたい
・分籍の手続き方法を知りたい
・毒親育ちにとってのメリット、デメリットを知りたい
「自分の親は毒親だ」と気づいて、最終的に毒親との絶縁を視野に入れている人が増えてきました。そのひとつの選択肢が分籍ですが、なじみがないゆえに、どんな手続きかわかりにくい手続きでもあります。
私は、30歳のときに自分の親が毒親だと気づいて、36歳のときに分籍をしました。それまではズルズルと先延ばししていました。

そこでこの記事では、分籍の手続き方法や手続き上の注意点だけでなく、毒親育ちにとってのメリットとデメリットについて解説します。
この記事を読むと、分籍の手続きをすべきか検討しやすくなり、実際に手続きするときにも対応しやすくなります。
分籍は自分だけが登録された戸籍を作る手続き

分籍(ぶんせき)は、あなたひとりだけが登録されている戸籍を作る法的な手続きです。
元々、戸籍は家族単位で作られています。戸籍の代表者が筆頭者となり、その家族が登録されています。
たとえば、父親、母親、あなた、きょうだい1人の4人家族の場合、筆頭者は父親、家族の構成員として、母親、あなた、きょうだいが登録されています。
分籍手続きで用意するもの
分籍の手続きで用意するものは下記のとおりです。
・分籍届 1通
・戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 1通
・届出人の印鑑
・届出人本人の確認書類
分籍届と戸籍全部事項証明書は役所で入手できるので、実際の持ち物はあなたの印鑑と本人確認書類の2点です。
分籍手続きの対象者
分籍手続きができる対象者は、現在登録されている戸籍の筆頭者および配偶者以外で、20歳以上の方です。毒親に育てられた子供の立場であるあなたは、20歳以上であれば手続きが行えます。
分籍手続きの注意点
分籍の手続きでできないことは下記のとおりです。
・分籍後の元の戸籍には戻れない
・分籍しても、家族や親せきと絶縁はできない
・分籍後の戸籍は、家族や親せき、家族や親せきに委託された人物が閲覧できる
これらは法律で決められていますので、この点を承知のうえで手続きを行ってください。
分籍後の戸籍を家族や親せきに見られたくない場合は、分籍とあわせて戸籍・住民票の閲覧制限手続きを強くおすすめします。手続きができるのは、住まいのある市区町村の役場もしくは警察の安全課です。
閲覧制限について、詳しくは下記の記事を参考にしてください。
分籍の手続きであらかじめ決めておくべきこと


戸籍には「本籍地」の登録が必要となります。
本籍地は、
この2点を満たしていれば、どこを選んでもOKです。あなたが好きな観光名所やアミューズメント施設を本籍地にすることもできるのです。
ただし、必要に応じて、戸籍謄本などの公的書類を取りに行くことはあります。現住所地や住まいの近くにある観光名所にするのが無難です。

分籍の手続きの流れは3ステップ

分籍の手続きの流れは下記のとおりです。
・STEP1:住まいのある市区町村の役所へ行く
・STEP2:戸籍課の窓口へ行く
・STEP3:分籍届を記入して提出する
STEP1:住まいのある市区町村の役所へ行く

役所の場所は、住まいのある市区町村名と「役所」と入力すれば、すぐ検索できます。あなたが行くべき役所の所在地、開庁時間を確認してから行きましょう。
STEP2:戸籍課の窓口へ行く
戸籍課の窓口は、住まいのある市区町村に行ってフロアガイドもしくは総合案内で確認できます。出入口に案内係の職員が常駐していることもあるので、わからないときは聞いてみてください。
STEP3:分籍届を記入して提出する

届出書を作成するブースに届出書も置かれていますが、マイナーな手続きゆえに分籍届の届出書は置かれていないかもしれません。分籍届が見当たらなければ、近くにいる案内係の職員、もしくは窓口の職員に確認してみてください。
分籍の手続きをする人は少数派

法務省の「戸籍統計」によると、2020年度の分籍届出者数は29,382人。同年の日本の人口は約1.2億人なので、分籍する人は少数派といえそうです。
しかし、分籍する人が少数派だからといって、「分籍をしてはいけない」というわけではありません。分籍する人は、結婚する人、離婚する人、実家から引っ越しする人、自分の意思で分籍する人の4パターンです。

結婚する人

夫が結婚を機に実家を出る場合は、新しく夫が筆頭者となる戸籍を作り、配偶者として妻が登録されます。夫が一人暮らしなどですでに分籍していた場合は、夫の戸籍に追加されるだけで、新しい戸籍を作りません。
事実婚を選んだ場合は役所に婚姻届を提出しないので、別々の戸籍を作ることとなります。
離婚する人

離婚後の戸籍は、
・家族が登録されている戸籍に戻る
・分籍の手続きをして、自分ひとりの戸籍を作る
の2つのうち好きな方を選べます。
違いは「離婚歴が登録されるかどうか」です。家族が登録されている戸籍に戻ると、離婚歴が登録されます。「再婚した時に離婚歴がバレたくない!」「戸籍を入手するときに離婚の2文字を見たくない!」と感じる方は、分籍を選ぶのが無難です。
実家から引っ越しする人

銀行口座を開設するとき、パスポートを作るときなど、戸籍をはじめ公的書類が必要となる場合があります。実家のままだと、公的書類を取りに行くために仕事を休んだり、休日に時間を作ったり、面倒です。
役所に取りに行かず、郵送で申請して入手することもできます。しかし、必要書類をそろえるのは手間がかかるし、入手までに時間がかかり不便です。
自分の意思で分籍する人

「毒親から逃れたい!」と考えて分籍する場合、この分類に当てはまります。人それぞれ理由はありますし、後ろめたい気持ちにならず堂々としていればOKです。
毒親育ちほど分籍の手続きに踏み出しづらい


具体的な理由は下記のとおりです。
・理由1:分籍の手続きを知らない
・理由2:分籍をしても毒親と絶縁できない
・理由3:毒親の影響が少ない
・理由4:毒親と同居している
・理由5:家族神話を信じている
・理由6:世間体を気にしている
・理由7:職員に分籍理由を勘繰られそう
理由1:分籍の手続きを知らない
分籍は、役所の手続きの中でもマイナーな手続きです。
私が手続きに行ったとき、職員によっては「分籍ってなんだっけ?」という顔をされている方もいらっしゃいました。一般人には、よりなじみのない手続きの可能性が高く、知らないから手続きしないのも自然の流れでしょう。
理由2:分籍しても毒親と絶縁できない
冒頭で紹介したとおり、分籍しても毒親と絶縁できません。
わざわざ役所へ行って手続きをしても、労力がかかったぶんのメリットを実感しにくいです。実生活に何も影響ないので、分籍の手続き自体を知っていても先延ばしにするのも自然の流れでしょう。
理由3:毒親の影響が少ない
毒親と別居していると、電話やLINEで連絡を取っていても、直接影響を受けたり攻撃されたりする機会は少なくなる傾向があります。
分籍しなくても穏やかな生活を送れているなら、わざわざ手続きする必要はないでしょう。
理由4:毒親と同居している
毒親と同居していると、戸籍の筆頭者は父親になることが多く、分籍をしたくてもできません。
「毒親から離れたい」と思っていても、事情があって同居せざるを得ない場合もあります。分籍以外にも毒親と距離を置く方法はあるので、できることから始めてみるのはアリです。
毒親と距離を置く方法について、詳しくは下記の記事にて紹介しています。
理由5:家族神話を信じている
「家族は絶対」というような価値観があると、罪悪感を覚えて分籍の手続き自体をためらいます。
分籍の手続きに絶縁するほどの効力はありません。しかし、手続き上、子供自身も分籍したいと思うことに「家族を裏切っている」という感覚を持ちやすいです。今の状況を変えたくても、分籍をその突破口にしづらいのです。
理由6:世間体を気にしている
将来的に結婚を視野に入れていると、パートナーやその親族の心象が微妙になることがあります。
家族の話をしたくなければ、適当に濁して対処はできます。しかし、分籍はマイナーな手続きゆえに、どんな手続きか説明しなければならない場面に出くわすかもしれません。
ひと通り説明して気まずい思いをするなら、無理に手続きしないことも選択肢のひとつです。
理由7:職員に分籍理由を勘繰られそう
分籍の手続きは対面で行われるので、自分から進んで分籍の手続きをすると、職員が疑問に思う場合もあります。
その可能性はゼロではありません。しかし、職員には守秘義務があるので、第三者に口外しないでしょう。勘繰られたとしても、二度と出会わない可能性が高い相手なので、気にするほどのことではありません。
分籍は毒親育ちにとってメリットのある手続き

分籍の手続きにはメリットもデメリットもありません。しかし、戸籍上だけでも毒親と自分とを切り離せられるという点で、分籍は絶縁に向けた有効な手段のひとつと言えます。
毒親育ちにとってのメリットは下記のとおりです。
メリット1:自分の行動に自信が持てる

毒親育ちは、毒親の言動に我慢しがちです。分籍によって「(自分でも)やればできる」ということを実感でき、毒親と距離を置くための行動を起こしやすくなります。
毒親の影響による「しなければ」「すべき」という思考が少しずつほぐれて、選択肢を広げるきっかけになるのです。
メリット2:毒親と心理的距離を置ける

毒親育ちは、毒親と自分を同一人物かのように扱います。代表的なものは、「自分の親は毒親育ちだから、自分も毒親になるかもしれない」です。あなたもこのように思ったことがあるのではないでしょうか。
要因は、
・毒親が主となった主従関係
・毒親との共依存関係
・毒親からの否定的な言動
といった毒親による価値観の刷り込みです。
分籍によって、毒親との関係に一区切りつけることができます。毒親との関係を見直したり、あなた自身の人生について考えたり、心の余裕が生まれやすくなります。
メリット3:毒親の情報を見なくていい

未来に何が起こるかわかりませんし、戸籍を入手する機会はゼロではありません。何かのきっかけに住民票や戸籍を取りに行く……そのとき毒親の名前が目に入ったら、住所を見たら、気が滅入ったりストレスになったりします。
毒親に対する見方が変わることもありますが、その域に達するまで時間がかかります。その間のストレス軽減、メンタルの安定のための手段として有効です。
メリット4:毒親にバレる可能性が低い

毒親が公的書類を入手する可能性は、
・熟年離婚をするとき
・父親か母親が亡くなるとき
・引っ越しをするとき
・パスポートを作成するとき
・銀行の口座開設など手続きするとき
のいずれかです。
たとえば、厚生労働省「令和元年人口動態統計月報年計(概況)」によれば、2019年の離婚件数は208,489件、このうち熟年離婚は40,395組。全体の19%にすぎず、よっぽどのことがなければ離婚しないのではないでしょうか。
葬儀などがあっても、手続きや対応に追われます。公的書類を入手しても、内容を細かく確認するほどの余裕はほとんどないでしょう。
ただ、分籍が「絶対にバレない」という保証はどこにもありません。私は例外的にバレて、面倒なことになりました。詳しくは下記の記事で紹介しています。
分籍の手続きQ&A

最後に、分籍の手続きにまつわる疑問をQ&A形式でまとめたので、参考にしてみてください。
本人確認書類にはどんなものがあるの?
本人確認書類は、下記のようなものが挙げられます。
・自動車運転免許証
・パスポート(旅券)
・マイナンバーカード
・写真付き住民基本台帳カード(住基カード)
・在留カードまたは特別永住者証明書
・療育手帳
・身体障害者手帳
・公官庁が発行した免許証、許可証、資格証明書で、本人の写真が貼ってあるもの
このどれかひとつを持って行けば、役所で手続きができます。どれも持っていない場合は、役所の職員に相談してみてください。
戸籍全部事項証明書はどのように入手するの?
戸籍全部事項証明書の入手方法は、全部で4つあります。
入手方法 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
1 | 本籍地の役所に取りに行く | 最短で入手できる | 平日に予定を調整し、本籍地が遠方だと長旅になる |
2 | 本籍地の役所に申請書類を郵送して入手する | 本籍地の役所に行かなくても入手できる | 申請書類をそろえるのが面倒、入手までに時間がかかる |
3 | 本籍地の行政サービスセンターに行って入手する | 平日の夜や土日など、自分の都合で入手できる | 地域によって営業日・営業時間が異なる |
4 | コンビニで入手する | 早朝や深夜、土日祝日でも自分の都合に合わせて入手できる | マイナンバーカードもしくは住民基本台帳(住基カード)がないと発行できない |

まとめ:必要なものをそろえて分籍の手続きをしよう!

上記で紹介した「分籍の手続き方法」を実践すると、誰でも簡単に分籍の手続きができます。
最後にもう一度内容を確認しましょう。分籍の手続きで必要なものは下記のとおりです。
・分籍届 1通
・戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 1通
・届出人の印鑑
・届出人の本人確認書類
分籍は、生活や人生を大きく変える手続きではありません。「毒親と絶縁する」「分籍する」と決断できたら、手続きするのをおすすめします。
手続きをすると、知らず知らずのうちに抱えていた毒親に対するストレスに気づけるし、毒親との関係だけでなく自分自身のことも客観的にみられるようになります。
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